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万が一の時のことを想定した普段からの行動と救命講習の必要性

2021-12-15

皆さんは普段、友人や家族、会社の同僚など万が一倒れた時、どう対処していくべきなのか、考えたことがあるでしょうか?めったに遭遇しにくい事なので、なかなか考えにくいと思います。

現在、日本人の死因は、がん、心疾患、脳卒中(脳血管疾患)の順になっています。

その中で、厚生労働省の「平成29年患者調査」によると、
脳血管疾患の総患者数は111万5000人、
心疾患(高血圧性のものを除く)は173万2000人です。
上記の数字は、継続的な治療を受けていると推測される患者数を含みます。

もしかすると、私たちの周りも潜在的に疾患予備軍がいるかもしれませんね。

今回のブログは、私が水泳教室開催中に会員さんが突然心筋梗塞を起こしたのですが、
万が一の時のことを想定した救命講習を受けていたおかげで慌てず対処が出来、大切な会員の命を
救うことができたお話です。

さて、お話の前にAEDについていくつか触れておきたいと思います。皆さんもどこかで聞いたりご覧になったことがあると思います。AEDは主に、医療機関や公共施設、駅、最近では路線バス等にも設置されています。また民間の会社等にも多く設置されるようになりました。

AEDの正式な言い方は、『Automated External Defibrillator』オートメイテッド エクスターナル デフィブリレイターといいます。自動体外式除細動器のことです。

♦️オートメイテッド(Automated)
 機械により制御・コントロールされている
♦️ エクスターナル(External)
 機器からのデータに従って動作する
♦️デフィブリレータ(Defibrillator)
 除細動器、細動除去器

AEDとは何をする器械なのでしょうか?
じつはAED、心臓の動きを止める器械なんです。
心臓を止めるなんて、驚くかたもたいへん多いかと思います。誤解の無いように伝えておきますと、正常に動いている心臓を止めるのではなく、痙攣(細動)を起こしている心臓に対して電気ショックを与え、痙攣(細動)している心筋をリセット(一旦停止)し、正しい心拍のリズムを取り戻す準備を行う器械のことなんです。
ですので、心肺停止の状態では、AEDは稼働しないのです。

前置きはこのぐらいにして、この日何が起きたのかお話していきましょう。

日 時:2019年11月26日(火) 20:50頃
場 所:K市室内温水プール
患 者:70歳代女性

<状況>
・練習中、プール内で他の会員にもたれかかるように卒倒
・顔色は血色が無く真っ青な状態
・目の焦点は通常とはあきらかに合っていない
・直ちにプールサイドに引き上げ、患者への声かけと観察を実施
・呼吸はしているように見えたが、胸部を確認したところ、呼吸による胸のふくらみが無い
・心肺停止の疑いあり(→死戦期呼吸と想定)
・嘔吐、出血等は無し

<対応>
・119番通報、AEDを持って来るよう指示
・直ちに胸骨圧迫を3名で交代しながら実施(一般利用者の中に、看護学生がおり応援していただいた)
・AED到着後、直ちに電極パッドを貼り付け解析を開始。10秒ほどで『電気ショックが必要』との器械の判断
・通電ボタンを押し電気ショックを実施した
 (患者は女性のため、周りを毛布で囲うようプライバシーを守るよう応援者に指示)
・電気ショック実施後、顔色の赤みが戻り回復が見られ、患者は寒さを訴えたので、毛布を被せ保温に努めた
・救急隊が到着し、状況を説明し引継ぎ

<その後>
・かかりつけ医が当直だったこともあり、直ちに緊急手術が行われた
・2週間で退院し社会復帰
・現在、水泳教室に復活し、支障なく日常生活をおくっている

今回の事故を通して感じたことは、常に万が一のことを想定した行動が大切だと感じました。また、救命救急講習を受講し、CPRトレーニングマネキンを使った胸骨圧迫の練習や、AEDの取り扱いに慣れておく必要があると思います。カーラーの救命曲線をご覧いただくと、心臓停止(細動)から3分以内に処置をしないと、救命率は50パーセントにまで下がってしまいます。
また、死戦期呼吸といったことも考慮しなければならないことも経験いたしました。死戦期呼吸とは、患者が普段通りの呼吸をしているように見えるのですが、実際は心臓が細動(痙攣)している最も危険な状態であり、判断が最も難しい症状です。このような状況では、直ちに胸骨圧迫を実施する必要があります。

皆さんも、このようなことが常に起こりうることを想定し、救急救命の講習を受けてみませんか?
ご興味がありましたら、水泳協会までご連絡ください。

来月は新年特集号ブログで、内木場さんの登場です!どうぞお楽しみに!

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